今日は快晴。日差しが強いのは難点だが、青い空に爽やかな風が絶好の行楽日和だ。
「うわあ、うわあ。ホントにT-パークだ。すごい〜〜!」
むぎははしゃぎながら、周りの人やお店を物珍しそうにきょろきょろ見ながら歩いている。
「へえ、ホントにキャラクターだらけだな」
「周りの子も、かなりの子が頭に耳とか飾り付けてるね。ホラ、リボンとかヴェールが付いたのとかいろいろ」
「普段は付けられないような物でも、こういうところでなら恥ずかしくないからね。逆に十分に夢の世界に浸れて楽しくなるだろうし」
「そうか。こうしたグッズには意味がないと思っていたが、場所と商品とが相乗効果をもたらすんだな」
「もー、一哉くんってば。こんなところでまで仕事のこと考えないでよ!」
わいわい言いながら歩いていても、周りもにぎやかだから気にならない。そこへ
「むぎちゃん。ホラ、これ」
瀬伊が突然、可愛らしい耳とリボンの付いたカチューシャを持って現れた。いつの間にか買いに行っていたらしい。
「あ、これ。さっきから気になってたんだ」
「せっかくここに来たんだし、これつけていこ?」
「いいの? ありがとう!」
むぎは弾んだ声でお礼を言った。ここへ来たら、やはりこういうグッズは欲しくなる。これ一つで気分が盛り上がるのなら、安いものだ。早速付けてみたら
「それじゃ、僕も」
瀬伊も耳付きのカチューシャを取り出した。男の子のキャラクターもので、むぎとお揃いだ。
「あっ、瀬伊くん。お揃いだね」
「うん。ここは、やっぱりこうでなくっちゃね」
そのやりとりに、麻生の目がつり上がる。
「テメー、いつの間にそんなもの買ってきたんだ」
「いいじゃん、いつでも。それとも羽倉も付けたいの?」
「ンなわけあるか!」
「え、麻生くんは付けないの?」
せっかく瀬伊も付けてくれて気分が盛り上がってきたのに、それはつまらない。むぎは何か代わりになる物がないかと、すぐそばのショップに入ってみた。
「あっ。ねえねえ、麻生くん。これなんかどう?」
「おっ、いいな」
むぎが示したのは、縞模様のバンダナだった。丁度この夏封切りの海賊映画に合わせて、アイテムを揃えているらしい。太めの縞模様と後ろで縛ったデザイン
は、麻生のTシャツにもよく似合う。むぎが機嫌良くレジへ向かった麻生を見送っていると、後ろから肩をぽんと叩かれた。
「僕はこれにしようかな。……どうだい」
依織が持ってきたのは、しっかりとしたつくりのカウボーイハット。落ち着いた茶色と革の風合いが依織の容貌を引き立てる。
「すご…。依織くんにピッタリ合ってるよ。カッコイイ!」
「フフ、お姫様にそう言ってもらえると光栄だね」
にこやかに笑う立ち姿もどこか優雅で、カウボーイハットなのにワイルドさよりも色気を漂わせるところが侮れない。
「ところで一哉は?」
「ホントだ。さっきまでそこにいたのに。どこ行ったんだろう?」
ぐるぐると周りを見回していると
「何してるんだ」
「一哉くん!」
後ろから当の本人が現れた。手にはもうショッピングバッグを提げている。
「あれ? 一哉くんも買い物してきたの?」
「ああ。後で何か言われても面倒だからな。今買ってきた」
「ホント!? ねえ、見せて見せて」
取り出した物を見たむぎ達は固まった。一哉がバッグの中から取りだしたのは。
「か、海賊の帽子……?」
黒地に金の縁取り。前面のスカルマーク。両翼と頭のてっぺんがとがったそれは、まさに海賊船の船長がかぶるそれだった。
「…一哉、どうしてコレなんだい?」
「一番前に置いてあったからだ。棚一面にあったしな。選ぶのも面倒だ」
確かにこの夏イチオシアイテムなので、棚にズラリと並んではいたのだが。
黒髪に黒い目。端正な顔立ちの一哉がかぶると、妙に存在感があるのはなぜだろう。
「……クッ、アハハハハ。一哉ってば、いいなあ」
「サイコーだぜ、御堂!」
はじけるように笑い出した麻生達を見て、一哉が首を傾げる。
「なんだよ。 何かおかしいか?」
「ううん、みんな似合うってこと!」
焦り気味の一哉の腕に、ぎゅっとむぎがしがみついた。「ぼーくも♪」と反対の腕を瀬伊がとり、「あっ、コラ、離れろ、一宮!」と騒ぎ出す麻生に依織が苦
笑する。
色とりどりの風船。ポップコーンの香ばしい甘い匂い。楽しげな音楽と笑い声が辺り一面にこぼれていて。
「誕生日おめでとう、むぎちゃん」
「…いっつもサンキュ」
「君がいてくれて、ホントに嬉しいんだよ?」
「まあ、いつもキリキリ働いているんだ。今日は存分に楽しめよ」
口々に言われる言葉に、胸の奥から温かな気持ちがあふれてくる。
「…みんな、ありがと!」
いつもいつも。当たり前のようにそばにいてくれる。それが何より嬉しいプレゼント。
満面の笑顔のむぎを囲んで、五人は煉瓦の道を歩き出した。