Secret voice

 抜けるような青空がどこまでも続いている。書類を整えて帰る身に、髪をなぶる風が心地よい。コツコツと石畳とパ ンプスの立てる音が、静かな廊下に響く。

 不意に、聞き慣れた名前が耳を掠めた。

「瀬伊様の声って、本当に魅力的ですわね〜」
「そうですわねー。少し高めで甘くて、一言囁かれるだけで逆らえない力があるというか」
「さすが祥慶学園の妖精でいらっしゃるわよね」

 ここ祥慶学園で、誰もが注目するラ・プリンス。その一人である彼は、そのきれいな容姿も声も、繊細なピアノも、そのどれもが女の子達にとても人気 があって、どこへ行っても彼の話は出てくる。あたしが困るくらいに。

「あの声で、耳元で囁かれたらどうなるかしら」
「きゃあっ、はしたない。そんなこと想像もできませんわ」
「あ〜、もしそんなことがあったら、京香、きっと倒れてしまいますわー」

 ルーフガーデンでさんざめく女生徒達の声が、風に乗ってここまで届く。彼女たちのおしゃべりは、とどまることを知らない。

「知ってるよ、そんなこと」

 足を止めて、思わず呟いていた。誰もここにはいないのに。
 でも、知ってるの。
 囁かれたら、どうなるかなんて。

 そう、彼の声には力がある。
 優しげで甘くて、どこか儚くも聞こえるのに、実はとても意地悪なことも。
 その囁きを耳元で聴かされたら、何も抗えなくなることも。
 そして、一番力を発揮するのは、夜だということも。

「ねえ、むぎ」
 ほら、後ろから伸ばされた腕と声が、今夜もあたしをとらえる。
 それは、あたしだけが知っている Secret voice。






あとがき
 07年瀬伊誕生日企画第一弾。『S・E・I』のSで、お題(?)は「secret」です。
 瀬伊のあの声は引力ですよね、絶対。ゲームで初めて成瀬さんの声を聞いてから、ずっと私の中の特別です。「瀬伊が好き」というこの気持ちには、あの声の 力も大きいんですよーv

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