ハッピー・ハロウィン!〜金久保誉〜

「こんにちは、誉先輩。今、いいですか」
「あ、こんにちは。大丈夫だよ。どうしたの? 何か用事でもあった?」
「いえ、用事って程ではないんですけど。…トリック・オア・トリート!」
 誉先輩が、驚いたように目をパチパチさせている。
「え、どうしたの、急に」
「えと、今日はハロウィンですから。ご存じでした?」
「あ、うん。『お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ』だったっけ。そうか。ハロウィンって今日なんだね」
 納得したように、誉先輩が頷いている。
「そういえば、もともとは外国の行事だったっけ」
「ええ、そうなんです。せっかくなので、『トリック・オア・トリート』って使ってみたくて。……あの、ご迷惑でしたか?」
「ううん、大丈夫だよ。こんなこと言ってくれる君って、可愛いなって思ったし」
 さらりと言われた言葉に、つい顔が赤くなる。
「でも、お菓子か。……これでも大丈夫かな?」
 ちょっと困ったような誉先輩から見せられたのは、手のひらにちょこんと乗った、ピンクの和菓子。
「わあ、可愛い! これ、和菓子…ですよね?」
「うん。落雁なんだ。僕の家から送ってきてくれてね。すごく美味しいものだし、見た目も可愛いから、君にも見せたいなと思って。……でも、ハロウィンには 場違いかな」
「そんなことないですよ! すっごく嬉しいです」
 一生懸命に頷くと、誉先輩の顔がほころんだ。
「よかった、喜んでもらえて。……ホントは、君がしてくれる悪戯にも興味があったんだけど」
「えっ」
 思いがけない一言に、また頬が熱くなる。
「ふふっ、それはまたいつかのお楽しみにしようかな。さあ、じゃあ、こっちにおいで」
「どこに行くんですか」
「生徒会室。せっかくだから、お茶を点ててあげるよ。そこでじっくり味わってね」
 優しい笑顔を向けられて、心にじんわりと甘さが広がる。
「ありがとうございます!」
 誉先輩の横に並んで顔を見合わせたあと、私たちはゆっくり歩き出した。








あとがき
 愛が高じて、突発的に書いてしまった初書きスタスカSS第三弾。時期を見事に外したハロウィンもの。このネタが一番書きやすかったのが、部長でした。 「トリック・オア・トリート」で和菓子を出してもいいよね?
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