おままごと

「せいくん。いっしょにあそぼ」
 こむぎが瀬伊を見上げてにこにこ笑っている。もちろんとうなずいて、瀬伊はこむぎを振り返った。
「何して遊ぶ?」
「おままごと。むぎがおかあさんで、せいくんがこどもだよ」
「え〜。僕が子ども? 僕大きいのに、おかしくない」
「そうかな? ん〜。じゃあせいくん、なににしよう」
 あらら、困って考え込んじゃった。瀬伊はそんなこむぎの顔をのぞき込んで言った。
「僕、お父さんがいいな。こむぎちゃん、お母さんでしょ?」
「そっかー。じゃあ、せいくんがおとうさんね」
「うん。お父さんは何すればいい?」
 ちょっと首を傾げて考えていたこむぎは、「そうだ」と大きな声で叫んだ。
「おしごと! おとうさんはおしごといくの。かばんもってね。はいどうぞ」
 父親のしていることを思い出しているのだろう。一生懸命考えながら、かばんを渡す真似をする。
「うん、それで?」
「それで、『じゃあ、いってくる』って言って、靴を履くんだよ」
「はい。こんな風?」
 瀬伊も靴べらを持って、靴を履く真似をする。
「そう。せいくんじょうずー。でね、『いってきます』するの」
「行ってきます。母さん」
「はい、いってらっしゃい。……せいくん」
 言いながら、こむぎが瀬伊の服を引っ張った。
「ん? 何、こむぎちゃん」
 瀬伊が少し屈んでこむぎの顔をのぞき込むと

 ちゅっ。

 こむぎが背伸びをして、瀬伊の頬にキスをした。
「きをつけてね」
 こむぎの満面の笑顔に、滅多にないことだが瀬伊の頬が熱くなる。
 嬉しくて、彼女が可愛くて。
「おとうさんとおかあさんは、なかよしだもん。だからときどきちゅーするの。むぎにはないしょにするんだよ」
「こむぎちゃんも、大きくなったらちゅーしたい?」
「うん、おかあさんになったら、おとうさんとなかよしのちゅーするの」

 そうだね。いつまでもずっとなかよしでいよう。





あとがき
 こむぎ話。四人目は当然瀬伊です。実はネタ探しが一番難航しました。「いってらっしゃいのちゅー」って、書いてて自分も恥ずかしくなったよ……。私が書 く と、瀬伊話がいつも甘くなるので(だって好きなんだもん)、今回浮かんだネタは他のラプリから優先して書き、瀬伊をあえて後回しにしたのに、結果的に一番 甘いお話になった気がします。ひいきしているつもりはないんだよ!(多分)
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