ココア

「瀬伊くん、紅茶飲む? 新しいの買ってきたよ」
 お茶の時間、むぎがマグカップの用意をしながら聞いた。
 このところ、フレーバーティーをリクエストされることが多い。むぎが新しい紅茶の缶を開けようとしたら、
「今日はココアがいいな」
という答えが返ってきた。
 そっか、寒くなったしなあと思ったが、今日のバナナケーキはかなり甘い。
「でも、今日のケーキ、結構甘めだよ。ちょっとくどいかも」
「でも、甘いのがいいんだ」
とニッコリ笑って瀬伊が言う。
 なら、なるべく美味しいココアを入れようと、むぎは張り切ってミルクを温めだした。

 オフホワイトのカップから、温かな湯気が立ち上る。二人は並んでココアを飲んでいた。
 外は風が冷たそうだが、部屋の中はふんわり暖かい。
 ふうふう息を吹いて熱々を冷ましながら、少しずつココアを飲んでいたむぎは、
「このところ、フレーバーティーが続いてたのに、珍しいね。紅茶も いろいろ種類買ってみたんだよ」
と首を傾げて、瀬伊を見た。
「うん。それはまた今度飲ませてもらうよ」
「もしかして疲れてる?」
「そういうわけじゃないけど。今日は甘いものにしようと思って」
と言って、瀬伊はカップをそっとテーブルに置いた。きょとんとするむぎの前に顔が近づいて。

ぺろり。唇をなめられた。

「ね、やっぱり甘い」

甘いもの、欲しかったんだと天使の笑顔で瀬伊が言う。
「ね、もっとちょうだい」
ねだる声に我に返っても、その気になった妖精はもう止まらなくて。

ココア味のキスが止まるのは、不幸な同居人が帰ってきたとき。




あとがき
 寒くなってくると、ココアが美味しいですね。ちゃんとミルクと混ぜて作るのが好き。
 しかし、こんな時に帰ってきた同居人(麻生あたりか?)ホントに不幸だな〜。
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